3番目に載っていた『華歌』より一部抜粋。
頭の中に鉄が生まれる。悩みだすとこれである。それは重く、堅く、熱い。首筋から頭の天辺にかけて、じんじんと痛みに似た熱を帯びるのだ。私は頭蓋骨の中にある鉄の塊を取り出したいと願う。しかし触ろうとすると、頭蓋骨が邪魔をする。いっそ頭の中を爪で掻けたらどんなにすっきりするかわからない。
拳銃自殺というものがある。死にたくなった者が、こめかみに銃口をあてて引きがねを引く
のである。しかし、ある者は言う。
「こめかみに銃口を当てるのはよくない。失敗する恐れがある。本気で死にたいのなら、銃口をくわえて喉の奥に向けるべきだ」
そのようなことをしたり顔で話す人間を私は嫌悪する。拳銃自殺を選んだ者すべてを冒涜していると思う。悩みを知らない人間のいかにも言いそうな事だ。
残念ながら、喉の奥に悩みは無い。頭蓋骨の中にそれはある。拳銃自殺をする人間は、はっきりと死ぬことが目的でこめかみを撃ちぬくのではない。ただ頭の中にできる重い苦しみの塊を、銃弾という名医に手術して欲しいだけなのだ。私はそう言いきる。
自殺願望はありませんけど、すごく分かる気がしました。
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