
ボーイミーツガールや「剣と魔法のファンタジー世界」のお約束をあえてちょっと外したファンタジー。
その外し方のさじ加減がいい味になってます。
舞台は、人間(エムネトワイト)という種族が滅び去ってから500年以上が経過した世界。
生き残った他の様々な種族は、地上のとある脅威から逃れるため、浮遊大陸群(レグル・エレ)で生活しています。
この中で、主人公は滅んだはずの人間の男性、ヴィレム。
戦闘の後遺症により石化していたところをサルベージャーに発見され、500年ぶりに復活しますが、親しい人は皆既に居らず、新しい知人は出来るものの、気力を無くしてただ復活させてくれた恩返しのために日々をすごしていました。
とまあ舞台設定は、人がすでに滅んでいるという以外はそれほど変わったものでもありませんが、この作品、細かいところが面白いんです。
・ヒロインであるクトリ達の特殊な存在。
・お約束的な武器であるはずの「聖剣」がだいぶ斜め上。その製造法に基づいた「組み鐘(カリヨン)」という通称も良いですね。
・勇者(ブレイブ)
地上に人間が生きていた頃、教会に聖人認定され、他種族との戦闘で大活躍した存在。
よく聞くフレーズですが、これが一癖あって、その強さの源は「業」。または「説得力」とも言えます。
「英雄の末裔」だったり「悲劇的な人生」等、「だから強い」という納得の理由がある人を強化する一種の呪術。
「正規勇者(リーガル・ブレイブ)」が一人と「準勇者(クァシ・ブレイブ)」が複数居て、ヴィレムは準勇者ではあったものの勇者適正は低く、「勇者用の絶技」みないなものはあんまり使えないので努力で強くなったタイプ。
・冒険者(アドベンチャラー)
これも人間の世界にいた、厄介ごとを金銭で請け負う職業冒険者。多くのクエスト制ファンタジーRPGに登場するようなものと同じ。
冒険者ギルドの基準により戦闘習熟度を測定し、その数値化したレベルに見合った難易度の仕事が受けられる。
仕事によっては教会から派遣された勇者と一時的、または継続的にチームを組む事も。
ゲームでもないのに運良く敵を倒しただけで鍛練も無しに「レベルが上がって強くなった」とか言って、誰が決めてるのか分からない謎のレベルがなぜか自動的に上がる作品群に対する皮肉っぽくて面白いです。
・魔力
ヴェネノムと読む。
ラテン語で毒ですね。
心臓の裏側に魔の火を呼び込むとも表現されるエネルギー。
体内に貯めておけるような便利なエネルギーではなく、使う際に毎回「熾す」必要があります。
作者によると、「いわゆる消費型のマジックポイント的なものではなく、むしろ一種のバッドステータス」との事。
生命力と相反する概念で、強靭な肉体を持つ種族はヴェネノムを熾せない。
死に近い、生きることに執着していない者ほど大きな力を扱えるが、下手をするとそれで死ぬことも。
主に筋力増強や「聖剣」の励起に使うもので、遠くに飛ばすような使い方は出来ない。
儀式をしたりして様々な効果を発揮する、「魔法」としての使い方もあるようだが作中には殆ど出てこない。
代わりに出てくるのは「呪蹟(ソーマタージ)」と言って、こちらは複雑な刻印を組み合わせて世界に干渉する、星神の世界創造の模倣技術。
そう言えば、星神にはヴィジトルスとルビが振ってあり、ヴィジターズ、つまり外の世界からの来訪者なわけで、じゃあこの星の先住民って?っていう当然の疑問を割と序盤から読者に抱かせるのも面白い。
あとはやっぱり、キャラクターが面白い。
死を待つだけだったヴィレム。死ぬ宿命を受け入れたクトリ達。
両者が交わることで、青年は生きる意味を思い出し、少女達は生きられる可能性を見出す。
500年前の人物も、例えばヴィレムの剣の妹弟子にして正規勇者な少女リーリァは、ヴィレムへの好意を自覚しているものの、決して本人に伝えません。
才能あふれる彼女は、自分に比べてあまりに非才な兄弟子をからかう意地の悪い妹弟子、というような親しいけど男女の関係にはならない距離を保ちながら、「恋愛より養育院の家族を最優先するヴィレム。」を愛するという複雑な気持ちを抱えている難儀な少女です。
しかし、ヴィレムに家族と同様の扱いを受けると誰も見てない所で喜びを露わにする所が実に可愛い!
そしてヴィレムは、正規勇者という望んだ自分にはなれないものの、なれないと言われてもあがき続け、様々な武技や知識を吸収していった努力の鬼。
その結果、ずば抜けた状況対応力が身に付き、最強の準勇者と言われるまでに。
複雑な造りのカリヨンを現場で調整するという整備技師も真っ青な離れ技まで身に着けて、もはや完全におかしいレベル。
一芸に秀でた主人公も好きですが、こういう主人公も好きです。
惜しむらくは、年齢が若すぎる事かな。
15歳時点で既に色々な技術を身に着けているんですが、せめてあと2~3歳年上のほうが説得力あるかも。
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時は第五次聖杯戦争の少し前。
ロード・エルメロイII世ことウェイバー・ベルベットは、義妹ライネス・エルメロイ・アーチゾルテからとある依頼(不可避)を受けていた。
剥離城アドラと呼ばれる場所で、グレートビッグベン☆ロードスターが魔術師の遺産相続に関わる謎に挑む。
格好良い!
他の作品にもチョコチョコとは出てきたプロフェッサー・カリスマ。
魔術師としてはパッとしないものの、Fate/Zeroから10年の歳月を経てクールに成長してます。
可愛い弟子のグレイちゃん。
師匠と違って戦闘力が高いらしいけどどんな戦い方を?
なんて思ってたらあんな秘密が!
虚淵玄の解説でも触れられてますが、『シリアスな』ルヴィアも登場!
物語を華麗に彩ります。
文章も読み易いです。
ただ、P305のルヴィアがトロイの木馬に潜んでた人達について言うセリフ、「名だたる英霊」は「名だたる英雄」の方が良かったと思います。
その当時は生きてたわけですから。

ハイテンションラヴコメ(ラヴクラフトコメディ)這いよれ!ニャル子さん、完結。
俺はFlashアニメの2作目『這いよる!ニャルアニ リメンバー・マイラブ(クラフト先生)』から入ったんですが、それまでは「どうせ女の子達とキャッキャウフフやるだけの中身の無いくだらない話だろ?」と思ってました。
しかし、その予想は間違ってました。
く だ ら な さ の レ ベ ル が 違 う !
濃いクトゥルー神話ネタと、幅広いんだか狭いんだかよく分からないサブカルネタの数々。
ヒロインであるニャル子は四六時中グイグイ迫ってくるし、ニャル子が強いのを良い事に、容赦なくしばき倒す主人公の真尋(貞操とSAN値を守る為に)。
他にも、個性的で賑やかなキャラクター達。
毎度繰り広げられる、シュールでしょうもない事件の数々。
その様は正にカオス。
なんとなく成り行きから女の子と暮らす事になる――なんてゆるいのを想像して敬遠してる人は、ちょっと読んでみると良いと思います。
小説本編はひとまず終わりましたが漫画などの別媒体もありますし、人気が続けばその内外伝なんかも出るかも知れません。
ニャル子さんワールドはまだまだ終わりません。
アリソンからメグセロまでの登場人物総出演がコンセプトのシリーズ最終作。
"謎の転校生"トレイズの秘密を追っていた新聞部は、別の事件に遭遇。
事件の行き着く先は…?
トレイズとセロンが初遭遇。結構相性良さそう。
下巻では、ヴィルが凄まじい悪運の強さを発揮します。
今までフルネームは一度も出てこなかったけど懐かしいあの人物との再会。
生まれも育ちも…って所で気付いたけど、お前か!
大活躍だな。
本当に、一度でもまともな登場シーンがあったキャラクターは死人以外全員出ているようです。
『首都警察の刑事』なんてこんな人どこに出てきたっけ?と思ったけどなるほど!
ネットで調べてからリリトレ読み返してやっと分かりました。
そしてあの会話の事件が繋がってるのか!
『式場』で、詳しい事情が分からないキャラクター達の前に超VIPが続々と現れる様子は鳥肌もの。
サプライズに関する各々の詳しい反応(特にアックス)や、ラプトアの農家宅に説明しに行くヴィルとサイラスを書いて欲しかったという不満点はあるけど、面白かった。
『成長したカルロの旅行記』とか、『リイナとクルト』とかやりたいネタはまだあるのでもしかしたらまた何か書くかもしれないとの事ですが、今の所はまだ未定。
これが中締めにしても本当の終わりにしても、シリーズの締めに相応しい作品でした。
未知海域/宗田理
宗田理のデビュー小説だそうです。
漁業冒険小説。
いったいどこの層向けなんだ。
漁師?
勉強にはなるけど。
発売当初の世情的には、相当ホットな話題だったんでしょうね。
元々ニシン漁に興味を持った所から出発して書かれただけあって、漁や法律等についてはかなり細かく調べてあります。
ただ、俺はあまり入って行けませんでした。
よく出来てるとは思うけど。
宗田理のデビュー小説だそうです。
漁業冒険小説。
いったいどこの層向けなんだ。
漁師?
勉強にはなるけど。
発売当初の世情的には、相当ホットな話題だったんでしょうね。
元々ニシン漁に興味を持った所から出発して書かれただけあって、漁や法律等についてはかなり細かく調べてあります。
ただ、俺はあまり入って行けませんでした。
よく出来てるとは思うけど。

『リリアとトレイズ』からのスピンオフ。
メグの彼氏(になる前の)セロンが、メグに一目惚れしてからどうやって付き合うに到ったかという話。
優等生で美形でモテモテだけど、奥手でメグに告白できず親友のラリーに相談する日々を送るセロン。
夏休み、ラリーの誘いで一緒に演劇部の合宿を手伝った際、そこにコーラス部として参加していたメグの姿が。
ここで起きる事件を解決した事をきっかけに、部長のジェニー一人で活動してた新聞部にセロン、ラリー、メグ、オーケストラ部でラリーの幼馴染のナタリア、演劇部の臨時役者として参加してたニックの5人が入部する事に。
こうしてセロンはメグと同じ部活に入り、親しくなるチャンスを得るのだが…
今作は、前2作のような国を揺るがす大事件を巡る冒険物というわけではなく、新聞部の能力を買われて生徒から調査依頼を受けたり、旅行先で事件に出会ったりする学園探偵物のような感じ。
そこでキーになるのはセロンの頭脳。
そんな頭が良くて誠実なセロンに、だんだんメグも惹かれていくわけですけど、
メグ本人もそれに気付いてないという。
終着点はリリトレと同じ所なので大団円は確定されてるんですけど、そのちょっと前に何があったかも面白かった。
まさかあんな形で付き合うようになったとは。
メグが可愛いんですよ。
スー・ベー・イル出身なのでまだロクシェ語で喋ると常に丁寧語になってしまい、童顔も相俟って年下のような印象を受けるけど実際は1年の転入準備期間を置いてるのでセロン達より1歳年上。
しっかり者だけど意外と激情家で、暴走する事も。
普段の可愛らしさと時折見せる大人っぽさのギャップがまたたまらない。前2作のヒロイン、アリソンとリリアとはまた違った魅力。
他の新聞部メンバーも皆魅力的。
皆金持ちなので、その金持ちっぷりも気持ち良い。
首都第四上級学校自体金持ちの子供が多い学校なんですが、その中でもトップクラスの金持ちであるジェニーの金の使い方は凄いです。
セロン達が入部するまで一人で活動し、非正規部にも関わらず学校への多額の寄付により広い部室を確保。
しかも部の高級機材は私物。
でも嫌味じゃないんですよね。
金が有るからって物を粗末にするような事はしないし。
ちなみに、基本的には新聞部の活動という事で、セロン達は記事に載せる写真を撮るためにカメラを使います。
リリトレまではフィオナの趣味程度にしか出てこなかったカメラですが、このメグセロでは銃器と乗り物の話がほとんど入らない分の熱がカメラに向いてます。
特に4巻にはカメラを知らない人間からすると見慣れない単語がチラホラ出てくるんですが、ちょっと興味がそそられて面白いです。
外伝小説第2弾。ルーシェンが主人公です。
今作も本編の世界とは微妙に違う、前作と同じ世界の様ですが、メインの話はルーシェンの過去エピソードなので本編と関連していると思われます。
記憶喪失の状態でモンゴルの町ザミン・ウドの外れに倒れていたルーシェン。
果たしてどういう状態なのか、記憶を取り戻す手掛かりを探しながら町の人々と過ごし、町を取り巻く問題解決に協力するルーシェンだったが…
オルムウィルス蔓延の真相、初期型ゼーガペインの登場等のエピソードも語られます。

主人公はヴィルとアリソンの娘リリア。
相方をベネディクトとフィーの息子トレイズが務め、アリソン達とは一風変わったコンビです。
トレイズは、リリアが長期休暇でよく行くイクストーヴァで会う幼馴染というポジション。
しかしトレイズ本人やアリソンを始め、誰もリリアにはトレイズの身分を明かしていないので、リリアにとっては幼馴染とは言っても謎の多い人物。
前作の主要人物達ももちろん登場。
アリソンは、大人のこずるい知恵を得て更にパワーアップ。
フィーとベネディクトは、年中ラブラブ。
トレイズの双子のメリエル王女がしっかりしているので、娘に任せて公務をサボったりしてます。
このメリエルとトレイズの掛け合いもかなり面白いんですけど、残念ながら顔が出てこないんですよね。
メリエルの顔が出てきたのはアニメ
ヴィルは一番変わってますね。ビックリする程。
リリアが好きだけど、自分の複雑な立場上告白する勇気が出ないトレイズと、ヴィルに似て鈍いリリアの物語。
やっぱりこの二人も長期休暇の度にトラブルに遭います。

惑星に一つだけある大陸で、東のロクシアーヌク連邦(ロクシェ)と西のベゼル・イルトア連合王国(スー・ベー・イル)に分かれて古くから人々が争っている世界。
夏休みを静かに過ごすロクシェの上級学校生ヴィルの元に、幼馴染の空軍飛行士アリソンが遊びに来る所から物語は始まります。
地元で有名なホラ吹き爺さんが話す『戦争を終わらせる宝』を巡る最初の冒険を皮切りに、旅行の度にトラブルに遭うヴィルとアリソン。
そしてその都度、掛け替えの無い人達に出会っていきます。
アニメ「アリソンとリリア
アニメでは、『撃つべき時に撃たない、撃っても殺さない、あるべき描写が無い』等不自然な所が多かったんですが、やっぱりそういうシーンは原作ではちゃんとしてます。
ロクシェ語で喋ってるセリフとベゼル語で喋ってるセリフがあって、それが仕掛けとして上手く働いてたりするのも良いです。
まあアニメでは言語の切り替えって難しいでしょうけど。
星界の紋章
仮にリリカルなのは
時雨沢恵一らしい皮肉っぽい表現とか、セリフに現れない文章の面白さもアニメでは再現できない物ですよね。
もちろん趣味全開の細かい銃器・飛行機描写も魅力。
そして、鈍いヴィルに苦労するアリソンが可愛い。
朝日新聞出版
発売日:2009-06-19
活動限界間際の量子サーバーでセレブラントとして覚醒した少年颯 久浪と、久浪が任務中に偶然発見したサーバーに眠っていた少女レジーナのふれあいの物語。
基本的に、『レジーナ可愛い。レジーナ強い!』っていう小説です。(えー
物語は、久浪が救助され所属する事になったオケアノス級戦艦ルヴェンゾリを軸に進み、アニメでは描かれなかった設定や無かった設定も盛り込まれ、アニメの理解も深まります。
イス級ってイスの大いなる種族が元ネタ?
読んでるとアニメとの矛盾を感じる事も有るんですが、途中で解消されます。そういう事か!
ドヴァールカーのトガ達の出番も多く、こんなの読んだらXOR
面白かったです。
”僕達の戦いはこれからだ!”的な終わり方になっているので続きが有ってもおかしくないんですが、今の所は何も企画が無いようですね。